帝京大学 頂点への前進 | ラグビージャパン365

帝京大学 頂点への前進

2013/01/17

文●大友信彦


2012年度の大学選手権は、帝京大の優勝で幕を閉じた。
49年の歴史を持つ大学選手権で、4連覇は史上初の快挙。
これまで早大、明大など並み居る強豪校が到達できなかった領域に、帝京大は、いとも簡単に足を踏み入れたように見える。

しかし、ここに到達するまでは、長く険しい道のりがあった……。
帝京大が初の王座を獲得する1年前の大学選手権決勝。
最強王者のブレイクを目前に控えた冬へ、タイムトラベル!

2009年1月10日の国立競技場。

優勝校のキャプテンが、勝利者インタビューでおどけながらイマドキ語を連発していた頃、メインスタンド下の会見場では、敗者のキャプテン井本克典が声を詰まらせていた。

「今日の決勝は、国立という最高の舞台で……プレーできるという幸せを噛みしめて……しっかり勝って、優勝して……次へのスタートに繋げられたら、最高の締めくくりだったと思うけれど……」

そこで、声が止まった。

およそ20秒。会見室を沈黙が包む。

「今日の試合は、お互いに……本当にすべてを出し切った……ゲームだったと思います」
そしてまた、大きく深呼吸。

「秋と今と、お互いに力をつけてきて、本当に、ひとつひとつの細かいところで、早稲田さんが上回っていたのか……、それはわからないけど、今日この舞台に立って、やったことについては、胸を張って帰りたいと思います」

正式なチームのキャプテン、吉澤尊は、春の早大とのオープン戦で痛めた膝の回復が遅れ、今季は一度も公式戦に出場できなかった。対抗戦グループに初めての優勝を飾り、大学選手権では初めての決勝進出。帝京大の節目として記憶されるシーズン、井本は全試合でゲームキャプテンを務め、最後の試合で、初めて敗戦後の会見に臨んだ。

雄弁ではない。冗談もほとんど言わない。だがピッチの上では優勢でも劣勢でも動じることなく構え、的確な指示と、激しく身体を張るプレーでチームを鼓舞し続けた。
伝統校支配の根強い大学ラグビーでは新興勢力と呼ばれてきた帝京大だが、スキッパーは、どこか昭和のにおいを漂わせていた。

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